日本は地震のある国です。気象庁の調べで、1996年~2008年9月までの間で、震度5弱以上の地震は、134回発生しているとのことです。海外から来る旅行者のほとんどが、日本の治安は安全だけど、地震が怖いという話をよく聞きます。
その地震に耐える構造計画が、建物には必要です。
各住宅メーカーや工務店は、「当社の構造は○○工法を採用し、地震に対して安全・安心をご提供しています。」などというような謳い文句付けてカタログで紹介しています。
建築基準法の中で明記されている構造は下記になります。
- 木造
- 組積造(レンガ造・石造・コンクリートブロック造のこと)
- 補強コンクリートブロック造(上記のコンクリートブロック造とは異なり、耐力壁や鉄筋などの詳細な規定がある構造のこと)
- 鉄骨造
- 鉄筋コンクリート造
- 鉄骨鉄筋コンクリート造
- 無筋コンクリート造
「○○工法」「△△工法」とあるのは、各メーカー・工務店が、上記のいづれかの構造を用いて、各社独自に開発し、得たデータを加味して柱・梁・筋交いなどの大きさ・形を決め、お客様に分かりやすく、名前をつけて、説明しやすいようにした、メーカー独自の名称です。そのような名称を付けて、売り出すことで、メーカー・工務店として構造を統一し、部材のコストダウンと施工管理の標準化を図り、現場管理が容易になることもその理由に挙げられます。
その名称の構造を用いて、「阪神大震災にも耐えうる工法」「ビルに匹敵する構造強度を持った工法」と紹介しているのです。ですから、○○ハウスの構造がいい、✕✕ホームの構造がいいというものの全ての元となっているのは、建築基準法に明記されている、構造の一つに過ぎません。
設計事務所で設計を行う場合、お客さまのご要望の間取りとコストと地盤強さを加味して、適切な構造を選択します。上記の構造の中から選択するのですが、メーカーや工務店のような「○○工法」「△△工法」というようなものは、ありません。メーカーや工務店は、同じ仕様で同じ構造のものを大量に作っていきますが、設計事務所は、お客様に合せた建物づくりを行うため、1件1件、構造方法を選択し、1件1件、構造計算を行います。個人住宅であれば、木造・鉄筋コンクリート造・鉄骨造の3種類の中から選ぶことがほとんどだと思います。
選択した構造を元に構造計算を行うのですが、これは構造計算を専門に扱っている事務所が行います。当社の場合、顧問をしていただいている構造事務所か、提携している構造事務所に依頼しています。
建物の構造の「強さ」については、建築基準法にその規定があります。「阪神大震災にも耐えうる工法」「ビルに匹敵する構造強度を持った工法」と紹介しているものは、その規定よりも多くの荷重・加重を見込んで、メーカーや工務店の標準仕様として、設計されているものがほとんどです。ですから、そのような謳い文句を掲げるわけですが、その荷重・加重を見込むことで、間取りなどに制約が出たりすることがあります。その安全を見込んだ構造のため、希望する間取りが、その荷重・加重を見込んだメーカーや工務店の独自の工法のため、一般的には、可能なものが、出来なくなる可能性があります。
設計事務所では、1件1件、構造計算を行いますので、かなりのご要望を充たすことが出来ます。これは何故かというと、構造の基準を下げたから要望を充たせるのではなく、「希望する間取りを実現するためには、どのようにしたら可能になるか?」という至極当然な発想から設計をしているだけです。その中で、メーカーのような、多く荷重・加重を見込むか、国が定めた建築基準法の規定で進めるのか、を選択していくのです。当社では、そのどちらにも対応しております。また、免震・制震といった構造にも対応しており、木造に関しては、制震金具を標準仕様としています。
規定より多くの荷重・加重を見込むことは、コストにも影響があります。例えば、柱として12センチで必要十分な強度が得られるのに独自の工法のために実際には必要のない15センチとすれば、その分コストが掛かるのはお分かりになると思います。
必要な強度(性能)をえるために、建物全体のコストと性能のバランスを考慮して行うのが、良い建物、良い設計といえるでしょう。